建築図を CAD ソフトでトレースする
移動体基地局などの工事図面を作成するとき、既存の建築図をトレースして CAD データにしています。
そのトレース作業に関する現状をまとめてみました。
様々な条件により、寸分たがわぬトレースというのは難しいのですが、配置や物品手配に支障がないように注意しています。
1. はじめに
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建物屋上や屋内に基地局設備を設置する場合は、既存建築図などを参照して工事図面の検討・作図をします。
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工事図面は CAD ソフトで作図します(今は AutoCAD LT ばかりです)。
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工事図面を作成するときは、既存の建築図から「平面図」「立面図」といった図面を CAD でトレースしなければなりません。
数階に渡って機器を配置する場合は、トレースする量、枚数もその階数だけ増えます。
2. CAD が普通になる前のトレース
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CAD ソフトがなく、提出も紙図面のときは、控えの建築図を参照し、三角スケールとかで測りながらトレース用紙上にペンで作図していました。
数種類の鉛筆にロットリング、青色鉛筆に砂消しゴムなど、線を描くにも色々使いました。
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PC や CAD ソフトが出始めて、たくさんのペンがひとつのマウスやタブレットになりました。
それでもトレース自体は、紙図面を見て測って描くという同じような作業でした。
ただし、図面コピーやファイルコピーが容易なので、修正や重複部分の作図に関する手間は短くなりました。
3. 現在のトレース方法
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今の CAD ソフトは AutoCAD LT だと「アンダーレイ」という CAD画面上でファイルを参照できる機能があります。
その機能を使うと CAD 画面上に PDF などで受け取った図面を表示して、その図面をなぞりながらトレースできます。
(リンク先がなくなっていたため、リンク先を修正しました)
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アンダーレイは便利な機能です。
PDF アンダーレイで図面の線にマウスをスナップさせる場合、その PDF ファイルが、CAD から出力された線などのベクターデータを持つものでなければなりません。
紙の建築図を複合機などでスキャンして PDF 化しただけのファイル、つまり画像データでは使えません。
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PDF アンダーレイは、PDF 図面の線をなぞれる便利な機能です。
しかし、ベクターデータを持つ PDF ファイルでも、CAD から出力したときに若干縮小されたりして、線の長さなどに誤差が出ている場合があり、それを調整しなければなりません。
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建築図が PNG とか JPEG などの画像データの場合は、そのファイルを「ラスターイメージ参照」で CAD 画面に表示させ、それを基にしてトレースを行います。
アタッチする画像の解像度はなるべく高い方が、線などがつぶれないので作業の精度が増します。
4. 実際のトレース作業
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よく、「PDF から CAD 変換」といった機能を見ることがありますが、ほとんどの場合、変換元の PDF ファイルがベクターデータを持っていることが条件だと思います。
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新築案件とか JV 案件、機器増設などの特別な案件を除き、ベクターデータを持った PDF や CAD データを入手できることはないです。
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たいていの場合、提供されるのは製本された建築図の控えです。
更に、その大きさが見開きや片開きで A2 サイズだったりします。
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それをスキャンしたり、スキャンが難しい場合はデジカメで撮るなどして画像データのファイルを作成します。
そのファイルを「ラスターイメージ参照」で CAD 画面に表示させ、それを基にしてトレースを行います。
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建築図に書かれている基準線や通り芯の寸法値から、CAD 画面上で建築図の大きさを調整して作図します。
元データがベクターデータではないので、建築図の線にマウスをスナップできません。
建築図がゆがんでいる場合は、基準線や通り芯の範囲からはみ出ない程度に想定して作図します。
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建築図が斜めになってスキャンされている場合は、CAD の「回転」を使って修正して作図。
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建築図の縦横の比率と寸法があまりにも合っていない場合は、画像ソフトで横や縦方向に縮小・拡大などして、おおよそ直しておきます。
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寸法が記載されていない場合は、画面上で寸法を計測しながら作図します。
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計測した値が切りの良い数字であることはありません。
壁厚など、計測値が 182.5634mm なら 180mm と判断して作図します。
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もし現場で採寸した寸法があるなら、そちらを参照して調整します。
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建築図のラスターイメージの解像度が小さい場合は、線がつぶれてしまったりして、ある程度想像で作業するしかありません。
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従い、トレースといっても、まったく同じ図面に仕上がるものではありません。
また、細かい設置詳細などは、現地で採寸された寸法を参照して別に作図する場合があります。
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外溝部分など、工事に関して不要なものは簡略して作図します。
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トレースのときは、工事場所以外の部屋名などは記載しないようにしています(部屋名も個人情報と考える場合があるため)。
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画像ファイルのようなラスターデータからベクターデータに変換するソフトもあって、Win Topo Free というのを使ってみたことがあります。
このソフトを使ったのは、白地図画像を現場見取り図や案内図用に CAD データ化するときでした。
英語ですが、建築知識など、日本語で説明しているサイトがあります。
フリーウエア版があるので購入前に試せるのが良いところです。
ただし日本語 OCR 等の文字変換はできなくて、文字も全部線データになったと思います。
日本の企業が開発している製品には、日本語 OCR 機能を持つものをあるようです。
単純な白地図で、範囲がせまいのであれば、ポリゴンや曲線などでなぞった方が早い場合もあります。
各社からラスターからベクターへの変換ソフトが提供されています。
5. トレース作業について
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ビル平面図のトレース作業は時間がかかるものです。
その作業をこちらでお手伝いできるかもしれません。
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作業のお値段は作図枚数や内容によります。
経験値で考えると、「1フロア 1500u(平米)、平面図 1・2・3・4・5階+R階」の場合、25000円〜30000円(税抜き)くらいになりそうです。
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連絡先 e-mail アドレス(直ぐにご返事できない場合があります)
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必要なもの
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平面図データ(PDFファイル等)。
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使用レイヤー、使用線色・線種、各種スタイル、使用枠の指定があれば、その資料、または見本・参考図面など。
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提出ファイルは、AutoCAD LT DWG ファイル(2013まで)になります。
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携帯電話基地局などの施工図や完成図作成作業を行うこともあります。
会社さんで書式などが異なると思いますが、資料・見本などを拝見できれば、お急ぎの仕事など、お手伝いできるかもしれません。
提出ファイルは、AutoCAD LT DWG ファイル(2013まで)になります。
6. 作図作業について
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作図のときには工事内容の他、色々考えています。
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施工図の作成で建築図のCADデータが無い場合はそのトレースの作業が必要です。
既設設備の施工図・完成図の CAD データがあれば、それを利用して作図します。
建築図トレースの有無や既設設備の CAD データの有無で作業量が変わります。
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作図にあたっては、その工事で使用する文字や線種・太さ・色、レイヤー種類といった情報が必要です。
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既設工事の CAD データがある場合は、基本的には既設のレイヤー設定に準ずると考えられますが、それが増設・移設といった履歴を持つ場合、最初のレイヤー設定情報と第二回目以降では整合がとれていないことがあります。
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場合によっては全ての情報が 0 レイヤーに設定されていたりします。
その場合、せめて建物や既設設備、新設設備、文字、寸法などでレイヤーを分けたい。
さらには線種太さにメリハリをつけるために破線・中心線なども別レイヤーに設定したいものです。
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また、既設・新設などを色分けする場合でも、白黒印刷などを考慮して実線、破線、一点鎖線など、線種を分ける場合もあります。
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プリントする際に印刷スタイルファイルを使用するか否かも重要です。
共通の印刷スタイルファイルを使用する場合、レイヤー設定にはそのファイルを参照します。
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しかし、既設の印刷スタイルファイルがあったとしても、そのファイルだけでレイヤー設定を行うことはできません。
「建物は何色」「設備は何色」といった情報が無いためです(説明欄に記載があれば良いのですが)。
その工事で使用するレイヤー設定の説明書があれば良いのですが、無い場合は、同じ印刷スタイルファイルを使った既設図面のレイヤー設定を参照するなどします。
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縮尺に対して設定する文字の高さによって、書き込める情報(引き出し文字など)の量に制限が出てきます。
ゴシック体や bigfont、extfont2 といったフォントの種類や文字幅も情報量に影響します。
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ゴシック体といった PC付属の TrueType などのフォントによっては、CAD アプリケーションでの図面表示にもたついたりします。
これはアプリケーションのバージョンと PC の OS の相性、PC 本体の性能にもよりますが、1/250、1/500 など、縮尺の小さい図面だとストレスを感じます。
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寸法線の文字についても同様ですし、寸法線・引き出し線で使用する矢印形状や大きさも図面の情報量に関係します。
大きな引き出し矢印は、作図した機器、躯体などを見づらくします。
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上記のよう、作図前にレイヤー情報などを決めることは重要です。
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